pickup!

「ここみたい。入りましょ」
「大きいお店ね、品揃え良さそう」

明るく大きな店内に入ると、大きく「このカート内のもの全品五割引」と書かれた看板の下で、アルディがなにかを漁っていた。

「アルディ、なにしてるの?」
「んぁ? ああ、アリーナか。俺は酒場の人にここのことを聞いて来たんだけど、アリーナもどっか行ってきたのか」
「うん。ブラジャーとパンティとね、あとー……」
「やめろって。俺に見せなくていい!」
「使っていないのだから、私、別にはしたなくはないのでは…?」
「そういうんじゃないって」

ガチガチのお嬢さまは、こういうこと天然でやるからマジでビビる。と呟きながら、アルディは既に袋に手を入れていたアリーナの手を引きずり出した。

「女子が下着を見せて良いのは、同じ女子と、特別なときの好きな男にだけ。これは、お兄さんとのお約束だ」
「特別なとき」
「そんときゃわかるし、男に任せとけ」
「んー? 変なアルディ」
「変でいいから覚えとけ」
「ん? う、うん。わかった。ところで、なに見てたの?」

アルディは切ったばかりの髪の毛を、ぼりぼりと掻いた。

「下着と靴下とタオルだよ。何でも良いから安いのないかって、この中見てた」
「こういうの?」
「だから。お前、この国の王女さまだろ? お姫さまだろ? 簡単に男のパンツ持ち上げないの。分かったか? な? 理解しろ?」
「別に、アルディが履いたものじゃないのにー」
「男性の下着だなんて、そんなものはしたないわ……とか。せめて、そのレベルにはなって?」
「よくわかんない」

アルディったらまったくー。とアリーナはカートの中に男物の下着を戻し、これなら良いでしょ? と、タオルを取り出した。

「そうそう。そういう感じでお願いします。うーん、安くていい感じかな。これにしよう。同じようなやつを、あと何枚か探してくれよ」
「うん」

アルディは下着と靴下、そしてアリーナが安いタオルを、肩を並べてワゴンで探していると、後ろからライアンが声をかけてきた。

「この国の姫君が安売りワゴンで、なにをお探しですかな?」
「あ、ライア……ン?」

髪を短くし、髭を整え、新しいシャツとパンツに身を包んだライアンは、まるで別人のように清潔感のある男性だった。

「私はタオル探しのお手伝い。アルディは下着と靴下ですって」
「姫君のタオル探しが、あまりに面白そうで。つい声をかけてしまってすまなかった。俺がタオルを見ておくから、アリーナは自分のものを見てきたらどうだろう?」

ライアンがアリーナに声をかけていると、マーニャがアリーナを迎えに来た。

「アリーナ。どこ行っちゃったかと思っちゃった。……って、誰かわかんなかった」
「そんなに違うか?」
「酒場で女の子ナンパしているような、なんちゃって戦士よりはずっといい」
「褒められているのか貶されているのか、わからないな」
「ライアン見たことない?」
「女性が困っていたらその場は助けるが、相手の方に興味を持ったことがないからなあ」
「あらジェントルマン。じゃぁ、このお姫さまは私が連れて行くわね」
「お任せしたよ、舞姫さん」

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