pickup!

前日の夜から、自分の安楽椅子に腰を掛け、腕組みをしたまま、ピクリとも動かなかったバーンスタイン公爵は、朝日が昇るのを確認したと同時に目を開けて立ち上がり、隣室に出向いた。

隣室にはクリフトが静かに長椅子に腰を掛けており、そのクリフトの膝の上には、アリーナの頭があり、長椅子に小さな身体を預けたまま、すうすう、と寝息を立てており、彼女の身体には、クリフトのマフラーが、申し訳程度に乗っていた。

過去、サントハイム最強の軍師と謳われた公爵の父と、その息子。血こそは繋がっていないが、国と意志によって繋がれた縁。二人はふと、目が合った。立ち上がろうとする息子に対し、片手で制する義理の父。

昇る朝日の光が、窓枠を通り過ぎ、二人の頬を照らしていく。義父は息子に言った。否、命じた。

「最後だけは必ずお前の手で斬れ。気の毒だが、あの姉妹や勇者殿にも決して渡すな。そして、サントハイムを取り戻すのだ」
「……はい。心得ております」

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