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スタンシアラの街へは、船を迂回して進まなければならない。船乗りにとっては有数の難所とも名高い、スタンシアラ海峡を幾日もかけて緩々と超えて、ようやく到着したのが、水路で人々だけではなく、街の商店までが行き来する水の都。スタンシアラだった。

昼過ぎに街に着き、宿の手配や船の停泊手続きを経たものの、ひと息ついた頃には、王に面通しをするには少々遅い夕暮れ前だった。

『王を笑わせた者には、どのような褒美も与える』という、そんな風変わりなお触れを世界中に発信しているお陰か、宿や酒場は旅人や荒くれたちで思いの外、繁盛しているようで、宿屋の主人は今夜の食事の提供が遅れてしまうことを皆に詫び、せめてそれまでの間、街を散策すればどうか、と提案してきた。

トルネコは街の武具屋や道具屋に顔を出し、武具を調整、修理してもらう算段をつける為に出て行った。ライアンはパトリシアを厩に預け、丁寧にブラッシングを施し、水や新鮮な野菜を与えていたし、ブライは外交上の書類を整えに部屋に篭った。普段ならば、それはクリフトの仕事ではあるのだが、ブライは「たまにはな」の一言で、請け負ってしまった。

マーニャとミネアは、酒場が繁盛しているならば、これ幸いと、ひと商売をしに向かった。アルディは、うねうねと曲がりに曲がったスタンシアラ海峡の波に、軽く酔ってしまったようで、クリフトから酔い覚ましの薬を受け取ると「メシまで、少し休む」と言い、部屋のベッドに横になったようだった。

クリフトは、新しい街へ着くと教会に行くことを欠かさない。神職同士のネットワークで、いまのこの街のありようや、近隣の情報を得ることが出来るからだ。旅路の無事を神々の像に報告することや、聖水作り、祈りも欠かさない。それが、クリフトのルーティーンだった。

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