pickup!

ライアンを加え、合計7人になったパーティはバーンスタイン公爵への経過報告の為にサランの街に駐留していたが、次に向かう場所はスタンシアラにしようということになった。海図を広げ、日数をざっくり計算。南下するより、北からのルートの方が早く、またスタンシアラ自体も寒いと判断したトルネコは、翌日の朝食の解散時に一向に告げた。

「さて……皆さん。出発は準備の都合上、一週間後になりますが、次に行く場所は冷えます。今から皆さんに予算をそれぞれお渡ししますので、それぞれ出発前に防寒着や、日常品を購入してください。諸事情で予算オーバーになってしまう方、忙しくて手が回らない方。別途ご相談くださいね。お願いしますよー」

皆はゴールドが詰まった袋をトルネコから受け取り、さて、と顔を見合わせた。

「クリフト、お前は良いよな。実家から持っていけば良いわけだし」
「そうでもない。最近、もう伸びないと思っていた背が伸びた。あと、胸板がまた厚くなったのか、前の服が合わない」
「あー。わかるわ。安いところで合う服あるかな」
「残念ながら、そういう面で自分は力になれない」
「フルオーダーメイドかー。立場上とかでの出費は辛いな」
「そういうときは、酒場のマスターに聞くといい店を教えてくれる」
「ライアンも苦労しそうだな、なんつーか……。筋肉の塊だし」

新しく加わったライアンは、見かけの無骨さとは裏腹に話しやすい男で、ずっと一人旅が続いていたせいか、孤独ではない分、天国のようだと言っていた。

「じゃ、俺はライアンと一緒に今晩、酒場のマスターに聞くとするか」
「俺なら、防寒着を持っているぞ?」
「もう少し持ってようぜ、あとは色々私服とか。あ、今日一緒に髪も切りに行こうぜ」
「まぁ、そうか……。せっかくの好意だ、少しは身だしなみに気を使うとするか。不潔感漂う男が一緒にいれば、女性たちに申し訳が立たない」

後ろ髪を括っていたライアンは立ち上がり、毎日清潔に保ってはいるつもりだが……。と続け、アルディの肩を軽く叩き、クリフトも一緒にラウンジから出ていった。

「儂も防寒着や下着は家にありますからの。必要なのは腰や血圧の薬やら。そうだ、歯の治療もしておきたい」
「予算が足りなければ、いつでも言ってくださいね」
「儂にもそれなりの蓄えはあるし、宵越しの金は持たん主義。その気遣いだけ、ありがたく受け取っておくわい」

そう言ったブライは、よっこいせと立ち上がり、まずはあのヤブ医者にまた会いに行かねばと出ていった。
そうしてトルネコと女性陣だけ残されたラウンジで、トルネコは懐から3つ、ゴールドが詰まった小袋を取り出した。

「実は女性には他に予算を取っているのです。どうぞ」
「えっ、なんで?」
「女性は色々な準備が楽しいものだと、妻から聞きましてね。ちょっとしたストレス解消です。とはいっても少しですが、私から個人的にご用意させてもらいました。お受取りください。あ、もし要らなければ、酒場で一杯奢ってくださいな」

パッと顔を明るくさせたのは、マーニャだった。

「ありがとー、トルネコ。ほんと良い旦那さんだわー」
「私、防寒着が破れちゃってたから、ありがたく頂戴するわ。ありがとう、トルネコさん」
「本当にいつもありがとう。余ったら返すね? トルネコさん」

3人の女性はトルネコから小袋を受け取り、ニコニコと顔を見合わせ、支度のためにそれぞれの部屋へ戻っていった。

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