pickup!

クリフトと一緒にバルザックと戦ったアルディは、バルザックを屠ったあと、暫く床に座り込んで動けなかったらしい。

「あー、しんどー……」
「大丈夫か」

声をかけるクリフトに、アルディはへらりと笑って応えた。

「きっついなー、もう」
「手を貸そう、動けるか?」
「いや、大丈夫だ。それよりも……」

アルディの視線は、後ろで抱き合って泣いているマーニャとミネアに注がれていた。

「仇を討ったんだ、暫く待ってやんなきゃな」
「そうか、そうだな」

あの二人は長い間、耐えてきたんだ、とクリフトも呟いた。

「お前、まさかバルザックの口から耳まで、へし斬るなんて思ってなかったよ。どんな坊さんなんだって」
「……アレはこの国を、姫さまをも侮辱した。私は確かに神官かもしれないが、それ以前に国と姫さまをお守りする、大義がある」
「あーあー、剣までへし折っちゃって」
「そうだな」
「家宝じゃなかったか?」
「お守りできない家宝なら要らない。あれは役目を果たした。義父もきっとわかってくれるさ」

ーーー生あるとき、バルザックはこう言った。
『この国の全ては俺のものだ。そうだ、あの美姫も私の奴隷にしてやろう。私の子をなしーーー』
そこで、悪魔のような形相になったクリフトが、バルザックの口に剣をねじ込み、耳までへし斬ったのだ。

もがき苦しみ、剣を引き抜こうとするバルザック。クリフトは叫んだ。

「マーニャさん、ミネアさん!」
「私とミネアの焔と風で!」
「屠ってやるわ、永遠に!」
「「父さんの、仇!」」

激しく熱された風がバルザックを切り刻み、そうして、役目を果たしたクリフトの剣も折れ、バルザックの骸は、小悪魔によって回収されていった。

「いつまで、続けるんだろうな」
「気が済むまで」
「もう、俺の気の方が折れそうだよ」
「嘘をつくな、シンシアさんを探すんだろう?」
「うーん、どこまでもなー」

ごろり、と大の字になったアルディが、天井を見上げながら言った。

「サントハイム、人戻ってきたらいいな」
「それこそ、どこまでも探しに行く。それが私の務めだから」

黒い手袋を嵌め直したクリフトは、折れた剣を拾い上げ、破れたカーテンに包んだ。

「直るのか? それ」
「王が戻ってきたら、新しい剣を賜りたいものだ。もちろん、直せるのなら出来るだけ直したい。後はトルネコさん次第かな」

そう言うと、クリフトは肩を回し、アルディもようやく立ち上がって、大きく伸びをした。

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