pickup!

そんな話をしながら下着屋につくと、アリーナは「うわぁー」と感嘆の声を上げた。

「下着が、いっぱい」
「気になる?」
「うん、私が着ていたものは、コルセットとか……胸のかたちをドレスのために、締め付けるようなものだったし、茶色だったり黒だったり……。だから、こんなにたくさんの色があって、ふりふりのフリルがたくさんあるのって、初めて見た。…あ、このピンク色のかわいいー。ふりふり……」

最初に、アリーナはサイズを計測しなければならないということで、店員を呼んだ。
店員は王女の姿を見て驚いたものの、お忍びだと伝えると、店の奥の客が少ない場所まで丁寧に案内してくれた。

「サイズの計測でよろしいでしょうか?」
「アリーナ姫は、一般のお店でお買い物をすることに慣れていなくって。だから、最近流行っている下着や、とびきりふりっふりな、かわいい下着も何着か。持ってきてくれるとありがたいかも」
「かしこまりました。それではまずお胸のサイズから……。こちらの試着室で、お測りさせていただきますので、どうぞ」

試着室に入るのに不安そうなアリーナに、マーニャとミネアは声をかけた。

「大丈夫よ、私たちここにいるから」
「気にしないでいってらっしゃい」
「う、うん。……では、よろしくお願いします」

狭い試着室に入るのも、アリーナは初めてだった。
かといって、不安だということもなく、ただ、自分があまりに世間知らずなのではないかという不安と、かすかな期待で緊張していた。

「まずはこちらお召しのお洋服を脱いでいただき、こちらにあるバスケットの中にお入れください。ブラジャーをお取りになったら、こちらにあるベルを鳴らして、お呼びください。すぐ外でお待ちしております」
「はい」

アリーナが服を脱ぎ、店員に言われた通りにベルを鳴らすと、すぐに巻き尺を持った先の店員が試着室に入ってきて、一言目に「まあ」と驚いたように声をあげた。

「アリーナさま、その肩。ストラップの肩紐の跡がついておいでです。お苦しかったのではございませんか?」
「えぇ、本当は……少し」
「参考までに、いままでお召しになられていた下着を拝見させていただいても」
「もちろんです、どうぞ」

アリーナが古い下着を差し出すと、店員はうんうんと頷いた。

「アリーナさまのお胸は現在成長段階にございますので、定期的に測り直して、新しい下着に更新していくのがよろしいかと思います」
「成長期ですか?」
「おっしゃるとおりでございます。それでは、測らせていただきますね」

しゅるしゅる、と手際の良い手付きで巻き尺がアリーナの胸の周りを巡っていく。

「アリーナさまのお胸は、既製品の規格でいえばE65です。これは世界共通の規格ですので、覚えておいていただければ、どこの店員にも通じます」
「E65ね、覚えたわ。本当にありがとう」
「それでは、これからいくつか見繕わさせていただきますので、お着替えの上、外でお待ちください」

アリーナが着替えて外へ出ると、マーニャとミネアが待っていた。

「サイズどうだった?」
「E65だって」
「なぬ。前から大きいなとは思ってたけど、ちょっと育ちすぎてんじゃないの? やばい、もう少しで追い越されてしまう……」
「姉さん…。張り合う場所じゃないから」

そこに、店員がいくつか下着を持ってきた。
そこでまた困り果てるアリーナ。

「マーニャ、ミネア。どうしよう。みんなかわいい。お金なくなっちゃう」
「迷うよねー。この薄いオレンジなんて。レースまでオレンジだし、いつも着ている服に合うんじゃない?」
「戦うときは、スポブラじゃなかったっけ」
「あー、それも買っておかないといけなかったんだ……。って、どうして、二人とももう買い終わってるのー?」

マーニャとミネアは顔を見合わせ、マーニャは軽く頭をかいた。

「だって、慣れているし…」
「いいのよ、アリーナはゆっくりで」

それでも焦るものは焦るし、しかし目の前に並べられたものは、自分が今まで知らなかったかわいいものだらけ。アリーナはうんうんと頭を唸って考え、最終的には三セット分の可愛い下着と、五枚のスポーツブラなどを購入し、三人は店を後にした。

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