pickup!

クリフトの傍らには、常に。
ーー王女がいた。
公爵は半分……否、本当は彼女なりの愛を確信していたかも知れない。王女はめいっぱいの光で、雑草のような息子に愛を注ぎ、見合いの年頃になっても、クリフトが良い、彼しかいないのだと拒否するばかり。責務と大きな闇で、彼女の気持ちと声が届かないクリフトは、まったく知らず。受け取った愛を持て余し、戸惑うばかり。

ある日、王女の父である現王は公爵に言った。
「娘には、言葉や憧れだけではなく、彼を愛し、数々の困難を乗り越え、本当の意味で彼を選んで欲しい。それは男親として寂しいが、実際、彼以上の男はいないのだ」

ーー公爵が厳しく育てた義理の息子は、いつしか禁忌の邪法、ザキを習得するようにまで、成長した。生命の理を破綻させるような魔法をも、いとも簡単に使えるようになった息子は強すぎる。近距離からも遠距離からも、生命の理を曲げ、声明を否定。サントハイムの為には必要不可欠だが、野蛮な存在となった息子に、公爵はいまは無き古代兵器である「リボルバー」というコードネームを与えた。

銃は遠距離攻撃であるが故に、トリガーを自ら引き命を摘み取っても、さしたる罪悪感もなく無頓着でいられる。なんと野蛮なコードネームだろうか。しかし、息子はその意味を知ったうえで、国の為、王女の為と、喜んで背負った。

義理の父は、そこでようやく素直に思えるようになった。息子には、自分が知り得なかった本当の愛を知ってもらいたい。そんなところに、件の無人城事件が起こった。そこで思いつく。息子がアリーナ姫の背中を守り、またアリーナ姫が息子の背中を守る。それは、古の戦法だ。愛し合うもの同士を敢えて戦場に投入することで、戦力は何倍にも膨れ上がる。

これが平和な世であれば。
こんなことにはならなかっただろう。
もっと、純粋で美しい花のような愛の姿もあっただろうに。

しかし、二人が生き残る手段は他にない。
アリーナをサランの街に留め置いた方が、幾らかでも国のその場しのぎにはなっただろう。だが、彼は二人を引き離すことなく、敢えてそのままにすることにしたのだ。

城が無人になったあの日から、全ては狂ってしまった。いや、王の声が一時とはいえ奪われたときから、さらにはもっと昔から、魔族たちによって狂わされていたのかも知れない。

だが神々は、天上ではなく地上で生まれ育った稀有な天使とも呼べる、アルディ・レウァールを、既に人類に遣わせていた。宗教国家サントハイムもこの状況に、指を咥え、空を見上げるばかりの無能者ばかりではない。公爵には手塩にかけて育てた義理の息子、クリフト・バーンスタインがいる。

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