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バルザック戦で折れてしまった、セイブ・ザ・クイーンの代わりに、クリフトがこの剣を使うのであれば、一度、クリフトの義父にも見せるべきだろうと、一行はルーラでサランの街にやってきた。

クリフトの剣の使い方を熟知している鍛治職人も、サランの街にいることもひとつの要因でもあり、トルネコは久方ぶりの珍しい剣だと、胸に抱いてまで大喜びしていた。

しかし夜はとっぷりと更け、鍛冶屋は閉まり、クリフトの年老いた義父は、相変わらず宿の最上級の部屋を取ってくれはしたものの、時間のかかること故に、会いに行くのは憚られ、その日は、サントハイムの髄を極めたご馳走と、酒で終わりを迎えることにした。

腹もこころも膨れた皆が、めいめいに部屋へ戻る中、ライアンはクリフトと肩を寄せ合い、話しをしているようだった。

「剣を使える神官……とは驚いた。宗教国家サントハイムにおいて、神事だけではなく、政治的な活動をも行う職という意味合いでいいのか?」
「八割はそれで間違いありません。残りの二割は、先ほど姫さまがおっしゃられた通り、騎士団の副団長を兼任しているものですから……。この国では、神官が大きな力と役割を持ちます。私とて、自分が無力だと感じることは多々あれど、信じてくれる国民たちの手前、それを表に出すことは出来ません」

ふーむ、と相槌を打つライアンの手元で、グラスの中の氷がカランと乾いた音を出した。

「今年で…いくつになった?」
「18です」
「18なんて、俺は遊び呆けていた時分だ。その18の少年に国を課すには、あまりに重たかろう」
「サントハイムは完全実力主義……。私を推した義父の期待にも応えなくては」
「そんなことでは、息が詰まるぞ?」
「まだ私には姫さまが、いますから」

年相応の笑顔で笑うクリフトに、人生の為には少し遊びも覚えたほうがいい、とライアンは言い、その後「そうもいかないのか」と頭をかいた。

「そんなことはありませんよ? 酒場の荒くれたち相手に、飲み比べや賭け事もするのです」
「そうか。まあ、仮に酔っ払いと殴り合いになったとしても、クリフトなら大丈夫そうだ」
「困ったら、ライアンさんに頼らせてもらいます」

また年相応に微笑むクリフトを見ていると、ライアンも何故か、歳の離れた弟が出来たような気分になって、クリフトに問いかけた。

「俺と剣でひと勝負しないか」
「いまからですか?」
「全力で掛かってきてくれていい。サントハイムの王女を護る、サントハイムの神官の姿を見せてくれ」

クリフトは一瞬影のあるような表情を見せたが、ライアンさんになら……と決意したように頷き、立ち上がり、こちらなら誰にも剣を見られずに済みます。と案内し出した。

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