pickup!

数時間後、場所はサランの街の大教会に移る。
既にアルディ、マーニャ、ミネア、そしてクリフトの四人はサントハイム城へ向かっており、そろそろバルザックとの戦闘が始まりそうな頃合いになっていた。

大教会の中には、不安と期待で胸をいっぱいにした民衆がどこからともなく教会の外まで集まって、大きな群衆と化していた。

そこに一際大きな杖を持って現れたのが、大神官の位を持つ、バーンスタイン公爵そのひとと、アリーナとブライであったが、ブライは杖をつき、トルネコも座る最も祭壇に近い最前の席に静かに腰をかけた。ブライもまた、バーンスタイン公爵が立てた策のことはよく熟知しており、叫び出したいほど緊張していた。

「アリーナ姫さま、こちらでございます」
「……はい」

アリーナは、サントハイムに古くから伝わる、王族の伝統演舞衣装を着込んでいた。昔から大きな闘争や戦闘が行われる度に、王家の女性はこの衣装を着て、女神像の前で神々に勝利を捧げる舞を踊ってきた。

アリーナがこの舞の基本的な動きを覚えたのは、母が亡くなって間もない、幼い頃だった。アリーナはこの舞を、一度だけマーニャに見てもらったことがある。

『へぇ……。きれいな舞じゃない』
『私が舞踏会用のダンス以外に踊れるのは、これだけ。サントハイムの王族の女性にだけ、昔々から伝わっている、特別な戦いのときに勝利を願う舞なんだけど、みんなの前で踊ったことなんてないんだ』
『神さまに捧げる舞か……。美しいものほど、どことなく恐ろしく見えるわ』
『えっ? 私、変な舞を踊っちゃった?』

焚き火の灯りに照らされたマーニャは、違うわよと微笑った。

『気高く美しいものほど、畏怖されるってこと』

更新お知らせ用ツイッターはこちら

おすすめの記事